Diving Cowboy

電脳世界のデフラグを。

輪るピングドラムに気づいて欲しい【感想・レビュー】

※ネタバレ注意

※100%個人の解釈、考察、妄想、愚痴です。

 

輪るピングドラムは衝撃でした。すごい作品です。語彙力消し飛ぶ。

沢山感情や意見はあるのですが、総括すると「すごい」作品です。

ストーリーや細かい考察などは様々な所で細かく記されているので省略しますが、私はこの作品を通じて感じた、現代社会へのメッセージを記したい。仕事のストレス発散です。

 

この作品は大人の大部分を占める、「何者にもなれない大人」が見て「気づく」アニメであると思います。

現在社会の隅々まで浸透しきっていて、我々は無意識に守り、遵守している「常識・固定観念という部分に疑問を呈し、

「家族=愛では無い」

「選ばれないことは死ぬこと」

「きっと何者にもなれない」

と、思考の奥底、きっと我々が本能の部分で感じている所を暴きます。露にします。

普段は固定観念がオブラートとなり、見て見ぬ振りどころか、考えることを禁止されているレベルで無意識に刷り込まれている部分を「裸にする」ので、この作品を見ても意味不明という感想を持つ人は、普段固定観念に囚われすぎているということなのではと。是非現在の社会がおかしいということに気づいて欲しい。

 

この作品では「愛」と「自由」を説いています。

愛は言わずもがなピングドラムであり、林檎をメタファーとして兄弟の中で分け与えられることで表現されています。

登場人物の殆どが愛されなかった子供、「社会の奴隷の被害者」であり、それゆえに承認欲求が非常に強い。

普通に育ってきた大部分が、何も気づかず行動を起こさない一方で、行動動機が明確である彼ら(現実にも沢山いるのでしょうが)こそが生存戦略しているのでしょう。

 

「自由」とは「きっと何者にもなれないお前達」「個が無くなり透明になる」という部分から脱却すること。これこそ我々への警鐘です。

「右に倣え」を生を受けた瞬間から刷り込まれ続けている我々にとって、透明になることは必至であり、常識という洗脳そのものです。普通こそが素晴らしい、皆と一緒が一番重要だという個の透明化は、良くも悪くも普通から外れた者に対しての強烈な迫害となり、色を持つ事が排除の対象となります。

「こどもブロイラー」というのは幼児虐待の意味が主でしょうが、悲しいことに、大人に当てはめてみても全く違和感がありません。我々も、名前がない透明な膝を抱えたモノでしかない。

 

作品のメインテーマは愛でしょうし、兄弟3名の苦悩と渇望が他のテーマと絡まりながら進んでいきます。最後は妹のために兄二人が無かった事にされるわけですが、物語は綺麗に描ききっています。

しかし、こどもブロイラーや、何者にもなれない大多数の我々の解決はありません。ただただ真実が暴かれてしまっただけです。

この醜い世界のシステムはそのままです。根本的な解決はないままです。

個人的にはアニメの中だけでも革命成功させて崩壊させて欲しかった。悪者側を半ば本気で応援してしまったのは私だけではないはずです。

大多数の「何者にもなれなかった大人達」へ、こういう問題が現実とリンクしている事を気づいて欲しい。そう思わせる作品でした。